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大間のマグロ問題の本質を斬る【一刀両断】小売り視点から見たブランド魚の功罪

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最近ネットニュースでも話題となっている「大間のまぐろの問題」は我々水産小売業に携わるものにとってもショッキングな話題となりました。

「魚離れ」と言われて久しい水産業界においても魚介類のブランド化、ご当地銘柄化は業界全体を盛り上げるものとして期待していたところです。

特に地方においては地域経済の活性化につながるものとしてそれに関わる人たちの生活にまで影響を及ぼすほどでした。

そのまさにトップブランド的な位置づけにある「大間のまぐろ」ブランドが崩壊の危機に直面しているわけです。

今回は小売りの立場からこの問題の本質がどこにあり何が問題なのかをつまびらかにしていきたいと思います。

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この大間本マグロの問題を受けての率直な思い

最初この問題を聞いて次のように思いました。

「ともあれ「大間のまぐろ」ブランドズタズタだな」

ということであり、同時に、

「とはいえブランド確立してしまっているのでこれからも強いんだろうな!」

ということです。

非常に残念なことです。

ブランドが傷つけられているにもかかわらずこれからも継続するって二律背反するようだけれどそれが強いブランドの特徴であり、一旦確立してしまうとちょっとやそっとじゃ崩れないということなんだと思います。

この問題はブランドというものに関してそこに潜むさまざまな問題を含んでいると思います。

今回様々な視点でこの問題を検証して本質を曝け出したいと思います。

大間本マグロ問題 事の発端はここから

この件を簡単に説明すると、

「大間沖で獲られていないマグロが大間ブランドのラベルを貼られて市場に出されていた!」

ということが週刊文春にスクープされたというのが発端でした、

大間まぐろ“産地偽装常習” 漁協トップがついに認めた

週刊文春電子版2022/11/22

こういった記事で大きく取り上げられたのです。

実は前々からそういった噂は出ていたようです。

「大間まぐろ」崩壊の危機、最高級ブランドの2つの闇にメスで大揺れ

Diamond online 2022.5.19 

このようにして大間のまぐろ問題は世間に広く知られるところとなりました。

それらの記事内容をすべて鵜呑みにしてはいけないということも念をおしておきます。

ただその後も雲行き怪しいまま展開され流れていきました。

大間本マグロ問題 事の顛末

そもそもの「大間のまぐろ」の定義づけも二転三転する事態があったようです。

すなわち元々「大間沖で漁獲されるマグロ」だったのが「大間港に入港するマグロ」というふうに定義が変更されたり戻されたりしたということです。

※後者の方が他の海域で獲ったまぐろでもよくなるので広くなります。

“大間まぐろ”商標はなぜ1カ月で方針転換したのか 漁協トップが語った

文春オンライン source週刊文春 2022年12月1日号

このニュースからこの問題の根の深さ深刻さが手に取るようにわかります。

で、結局その後様々な疑惑がマスコミに取り上げられいろんなことが明るみに出ていったのです。

この問題はブランド価値の問題と考えるのであえて「産地偽装」という表現は使わないでおきます。

なぜこのような大間本マグロ問題が起こったのか

なぜこのような問題が起こったのでしょうか?

昔は大間沖で実際に良質の本鮪が獲れていたのが環境の変化で最近はとれなくなったという事情が大きかったようです。

関係者の力ではどうにもならない自然の出来事が問題を大きくしていったのです。

良質なマグロは大間から離れた太平洋側でたくさん獲れるようになってしまったということです。

端的にいうと漁獲の環境が変わってしまったということです。

ここにまず「第1の悲劇」があります。

そして漁師は自分の獲ったマグロを当然高く売りたいから大間ブランドのあるところへ持ってこようとします。

それが大間沖でなく離れた地域で獲れたとしても大間ブランドで売った方が高く売れるので大間に持ってきます。

漁師たちも高く売れる大間ブランドで売りたいと思うのは無理はありません。

ほかの魚でもよくある話です。

漁協もそれを受け入れてブランドラベルの発行を許したか黙認したわけです。

とりあえずそれはそれでその地域での経済はお互いをお互いに追認しながら回っていたのです。

しかしながら大間沖で獲ったものでないのに大間のまぐろと認めていいのかという問題は残ります。

ブランドの価値を高めたいというところからそういった不満が出るのは当然のことです。

ここに「第2の悲劇」があります。

そしてここで先ほどの定義づけが問題となってくるわけです。

最終的に本意でないながらも漁協は広い解釈をとったわけです。

大間に持ち込まれたマグロなら大間のまぐろにすると。

それでとりあえず定義の要件は満たされました。

一応の体裁はとれたのです。

ただ、一般の消費者から見たら、大間沖で獲れてないのに大間のまぐろというのは果たしてどうなんだということです。

単純に考えてそれは違うのではないか、裏切りではないかとすら思うわけです。

今回の問題はまさにここなのです。

漁協は漁師とグルになって一般消費者を欺いているのではないかという問題提起がなされたわけです。

もちろん漁協の人も漁師も騙そうなんて思ってはいないはずです。

ただ、結果的にはそう思われてもしょうがない状況になってしまっていることも事実です。

大間本マグロ問題の本質

長年水産小売業に携わっている我々からするとこの問題は、

「あまりにもブランド力が強くなりすぎたが故の悲劇」

と考えます。

結局、当事者達にはどうにもならなくなったんだろうと思います。

既成事実が進んで進んで収拾がつかなくなったんでしょう。

大間沖に良質なまぐろが少なくなったという事実。

そして漁師たちは良質なまぐろがたくさんいる大間沖から遠く離れた太平洋側へマグロを獲りにいっているという事実。

この状況を一刀両断すれば、そもそも大間のまぐろブランドはもうすでに成り立たってないのではないかということです。

もし大間沖で獲ってないという事実があればそうなるはずです。

いくら定義を変更してもそれはこじつけになりますし、後付けのアリバイみたいなものになってしまいます。

一般消費者から見たらそう考えるのが自然です。

いってみれば大間のまぐろブランドはすでに虚像と化しているわけです。

それでも大間のマグロブランドは続く

そうはいってもこれからも「大間のまぐろ」ブランドは価値高く続くと思います。

ブランドというのは商品に与えられた付加価値であり人々に浸透して一旦確立されるとちょっとやそっとでは崩れないものと考えます。

なぜならそのブランド価値にあやかろうとする人たちが様々な思惑を持って精一杯ブランド力を維持しようとするからです。

ブランド価値の欠落を許さないわけです。

別に怪しい商売をする人たちばかりでなく、真っ当な商売をする人たちもその価値に依存するからです。

簡単にいうと大きな商いになるのです。

それがブランドなのでしょうが一旦築き上げられたものはそれだけの力があるのです。

ブランドの怖さ

一旦確立されたブランド力の凄さはある意味「怖さ」まで感じます。

おそらく今回の「大間のまぐろ」ブランドがもはや当事者たちの手を離れてしまっているのだと思います。

もちろんここまでくるのに尽力した人や関わってこられた方々の努力は並大抵なものではなかったと思います。

築き上げたブランド力。

そしてブランドには財産的価値がともないます。

この財産的価値は人によっては利権となりえます。

その利権をめぐっていろんな駆け引きが行われるのです。

その金額が大きくなればなるほど相互にプレッシャーも大きくなるわけです。

だから「怖さ」すら感じるわけです。

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大間の本マグロ問題の小売りへの影響

一般的に大間とつくだけでマグロの値段は高くなります。

セリ値もあがりますし、卸値の高くなります。

我々小売りの仕入れ値も当然高いです。

先日の節分恵方巻きで大間のまぐろを使ったものがありました。

大間のまぐろを前面に打ち出して。

ハーフサイズで2,000円前後してました。

太巻きならわかりますが中巻き(ハーフサイズ)でですよ!

それはそれで「大間のまぐろ」ということならと喜んで買ってる人もいました。

その意味ではブランド価値が消費者に対ししっかり「貢献」していました。

それが大間のまぐろでないとしたら。

まあ結果的に美味しければいのかもしれません。

ここにブランド問題の本質があるような気がします。

これはブランド価値全体の話として、

本物であろうがなかろが消費者が雰囲気を味わえればそれでうまく回る。

いやな情報さえ広げなければみんなシャンシャンでおわれる。

消費者に本物かどうかは二の次で幻想をみせてくれるのがブランドの力。

そう思えてなりません。

本来そうでないはずです。

産地偽装ではなくブランド価値の問題

今回の問題は直接的には産地偽装の問題ではないと考えます。

生鮮品で国産品の場合、水揚げした港名を産地すること自体は違法ではないからです。(JAS法、食品表示基準3条2項)

むしろ「大間のまぐろ」というブランドの価値の問題と考えます。

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まとめ

大きなブランドはやはりわかりやすいですし商いもしやすいのは間違いないです。

その分社会的責任も発生するわけで実態とブランドがかけ離れた時にいかに対処するかが難しい問題なのです。

大間のまぐろも多かれ少なかれ一般消費者に認知され貢献しているブランドなのであるべき姿を取り戻してほしいと思います。

そのための思い切った決断をすべきです。

消費者にわかりやすく説明できるように。

できないのであればブランド価値は著しく失墜すると思います。

いずれにしてもそれだけ事態は深刻ということです。

今回この問題も知らなかった人多いと思います。

その英断の期待も込めて今回取り上げさせていただきました。

<終わり>

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リッキー
鮮魚アドバイザー・刺身インストラクター・現役水産バイヤー 30年間培った鮮魚の販売、加工、管理技術を初心者に向けてわかりやすく解説。 なかなか教えてくれない秘技裏技も惜しげもなく公開。 一般向けにはみんなが笑顔になるお刺身の作り方ご案内。 すべてが魚食好きの人のために!日夜リアル、WEBで奮闘しています。 有限会社西村研究室(水産コンサルタント事務所)所属