
Q .魚で一人前になるには何年かかるのでしょうか?
何年も魚屋をやっているとこんな質問を受けることがたまにあります。
メチャクチャ抽象的な質問なので何度かやりとりさせていただいて答えを出すようにしています。
到達点がどこかによっても答えが変わっているからです。
今回はみなさんにもこの質問の答えの一例を紹介したいと思います
何をもって一人前という?
一人前とは、魚に関する業務を遂行する上で他人に頼ることなく速やかに適切な判断ができ、自らそして同僚部下に指示出しながら所属する部署の数値責任をまっとできる状態になることをいいます。
ただ一般的には周囲の期待に答えられる技量を持つと評価されることで一人前ということもあります。
そして目的、到達点によって一人前というものの捉え方というかレベルに違いがあると思いますのでまずは目線あわせしましょう。
一人前になると言った場合大きく分けるとこの2つです。
- 鮮魚部門責任者(チーフ・主任)として一人前
- 魚のスペシャリストとして一人前
それぞれに意味に違いあるのでそれぞれを詳しくみていきましょう。
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鮮魚部門責任者(チーフ・主任)として一人前になるにはどのくらいかかる?
この質問の場合が一番多いですね。
これでいうと企業規模や企業レベル、企業理念によって求められるものはさまざまなので一概に言いにくいところです。
大手は2年くらいでチーフにしてしまう
大手企業などは1〜2年でチーフになれる仕組みを持っていたりします。
そういうところでは答えは1〜2年ということになるかもしれません。
しかしここで勘違いしないでください。
業務遂行の能力として1〜2年でチーフになれるわけではありません。
素人同然の人でもしっかりした業務をサポートするシステムが補ってくれるならばという条件付きになります。
基幹系のシステムだけでなく、分析系のソフトも充実して受発注システムも各種伝票処理体系もしっかり構築されて誰でも難しい判断しなくてもできるよう業務内容が簡略化されている必要があります。
また、販売業務についても標準化されて迷うことなく販売計画から売場作りまで単純化されている必要があります。
人に経験や能力に依存する部分を莫大な費用をかけるシステムを構築するできるならということです。
そしてそのような仕組みを構築するためには億以上のシステム費用の投資が必要になります。
大手のスーパーマーケットでは可能でしょうが、ほとんどのスーパーマーケットでは無理ということになります。2020年の今の時代においても結構原始的な部分が残っているからです。
システムにコストをかけきれませんから1〜2年でチーフにするということはできないか無謀なことになるわけです。
では、実際に個人の能力(業務遂行能力)としてチーフになれるのには何年かかるのでしょう?

結論から言うと最低3年は必要だと思います。
エッ?!長すぎますか?
リッキーとしては短めに言ったつもりです。
本当は5年と言いたいところですが、できる人はできるという意味で3年としました。
日々のルーチン業務を自分で判断し、数値責任を達成するのには1年半もあればできるかもしれません。
しかし、1年に一度しかないイベントも魚屋には多いです。
- 年始セール
- 節分恵方巻
- ひな祭り
- 子供の日
- 母の日
- 父の日
- 土用丑の日
- お盆
- 底曳漁解禁セール
- かに解禁セール
- 歳末セール
これだけのものを1回や2回経験しただけで一人で回せるというのは素人が見ても無理だとわかります。
せめて3回は経験しないとわからないはずです。
また、数値責任を全うするということは数値コントロールをしなければいけませんが、学がある人でも現実の商いの数値をコントロールするには相当の経験値と論理的に考える能力がなければ難しいでしょう。
ただ、流れというかラッキーパンチで数値をあげたような形になる人はいるのでなんともいえませんが数値が下がった時に持ち上げる能力があるかどうかはまた別の話になると思います。
チーフの能力が備わってないのにチーフにさせられる問題点
いずれにせよ、チーフになるためには最低限の経験値と能力が必要だと思います。
しかし、スーパー経営陣が魚屋の仕事を甘く見ていたり、経費部分だけ見て机上の空論ばかりいう2代目バカ社長がいたりするところでは若手をすぐにチーフにしたりします。
しかも身内を含め自分のお気に入りの人だけ特別待遇で。
そうするとどんな問題が発生するかわかりますか!
だいたいのチーフは潰れます。
魚屋というのは技術を持った人が一番偉いと考えます。
技術を持ってない人は上の立場に立っても誰も信用しません。
例えばよくあるのは、
チーフがこうしてくれと言ってもベテランパートの人はハイ分かりましたと返事だけして実際は指示にしたがわず自分のペースで仕事をしたりすることがよくあります。
私に言わせれば相当規律のある会社以外はほとんどこんな感じだと思います。
簡単に言うとなめられるわけです。
返事だけして何もしない。とりあえず返事だけしておけばいい。
能力のない経験のない若手チーフの場合、ほとんどこれでやられます。
だって指示出す方も技術的なことがわからずに指示を出すわけですからまったく説得力がないわけです。
そもそも人は他人から指図されるのが嫌いものです。
自分の好きなようにやりたいのです。
自分に都合のいいことはハイと言って言うこと聞きますが都合の悪いことはなかなかやらないのがむしろ当たり前と考えた方がいいのです。
中堅どころのスーパーでも一緒です。
もちろん会社なので上司の命令には従わないといけないというルールはあります。
しかし、それは建前だけです。
企業の風土としてチーフの権限を強めて経験のないチーフも活躍できるというところもありますがそればごく一部です。
しかし、結局のところ能力のない人に指図されても自分に不都合なことはカチ無視しようと思えばできるのです。
そうすると困るのはチーフなのです。それを言い含めれられだけの技量がないわけですから。それで何人のチーフが潰れていったか。
人材難でもあるし、早くチーフを作る仕組みを作りたいというのは分かりますが、安易にやると貴重な人材を失うことにもなるのです。
魚屋の仕事はそんなに甘くないのです。
チーフを潰さないためにも
その意味でチーフになるためには少なくとも3年は現場経験させてください。
せめてイベントを3回経験させてください。
しかも、生鮮強化型の店舗を目指すならチーフの実力もある程度つけてからでないと本人もひどいし会社としても目指すところ実現できないでしょう。
結果レベルの低い売場にしかなりません。
刺身切身の技術も必要?
確かに技術的な面は完全でなくてもチーフとして一人前にはなれると思います。
いや全く刺身ができなくてもチーフはできると思います。
その代わり卓越した人心を掴む技術能力があるという前提条件あればですが可能だと思います。
しかし、スピーディにできなくてもいいとは思いますが最低限のキレイにできるレベルはあった方が良いと思います。
魚のスペシャリストとして一人前
リッキーは魚をやるにあたって1年で全てをマスターしてやると思って最初の頃はやっていました。
しかし、結果としてどうだったんでしょう?
一年どころかやはり4〜5年かかったんでないでしょうか。
そんなもんではないでしょうか。
教育システムがあまり備わってないということもありましたが、
1年目は作業の流れを覚えるので必死で、
2年目は人の心を掴むのに必死で、
3年目はようやくルーチン業務ができるようになったくらいといった感じでした。
5年たった頃にとりあえずイベント関係も少しわかったかなというところでした。
- チーフとして
- 全ての魚をさばけるようになるために
- どんな状況下でも安定した仕入れを続けられ
- どんな状況下でも安定した数値を確保できる
このレベルを全てマスターするとなるとやはり10年近くはかかるのではないでしょうか?
私も魚屋に携わって20年近くになりますがそれなりに数字は作れるようになりましたが、捌く技術や魚の知識はまだまだ満足できないことばかりです。
上を見れば切りがありませんが、とりあえず店の数値責任をまっとできるには能力のある人ならは最低5年くらいでわかるのかもしれません。
すみません、抽象的な答えで。
まとめ
魚の世界は奥が深いといいますが本当にそうだと思います。
ただ、魚をマスターすれば一生食いっぱぐれがないこともわかりました。
その意味では精一杯魚のことを覚えるのも悪いことではないと思います。
今回一つだけ言いたいことは人を育てるにはある程度時間がかかるものだし、それを短縮したいときはシステムにお金をかけないといけないということを理解してくださいということです。
お金もかけず=システムも作らずにチーフになる期間を短縮しようとするのは少し虫が良すぎます。
チーフが自然に育っていくのも見守るなんて甘い考えは今すぐに捨てて下さい。チーフの負担が大きすぎます。
会社が人を育てなければいけないのです。その成長過程を見守らないといけないのです。
そのことを理解するためにもスーパーマーケットの経営者は鮮魚部門にもっと踏み込んでください!もっと関わってください。と言いたいです。
そんなことを吠えさせていただきながら今回のお話は終了させていただきたいと思います。
ご質問ご要望についてはコメント欄かお問合わせメールでどうぞ。必ず返信させていただきます。
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<終わり>
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