ここでは獲れた魚の魚価が事前に算出されにくいという点と商圏が広く輸送コストの問題そして魚価の形成過程の複雑性が水産物の経済的性格という言葉でまとめられるということがわかります。
さらにここでも水産物というものが計画的に物事が進みにくい事情を有しているということが理解できます。
総じて、鮮魚という商品が工場の規格品と異なる性質を持つということがわかります。
1.生産者の規模がまちまち
わが国における漁業経営体数は年々減少傾向にあります。
それでも現在8万弱の経営体が存在しています。
ここ30年で58%まで減少している状況です。
※農林水産省の最新の調査では6万1360経営体まで減っているということです。
そしてその規模はまちまちです。
沿岸漁業をする個人経営体の割合が多いのにもかかわらず、金額ベースでは大手企業が多くの割合を占めているという状況が見られます。
その大手企業の流通機構は複雑で色々な過程を経ているというなかなかよくわかりにくい状況です。
小さな漁業経営体にしてもその規模や性格がことなるため、農業になるような生産者の共同出荷体制が取りにくいという事情があります。
流通圏が広い
水産物の生産は自然条件によって大きく影響されるため、生産物の地域性が顕著です。
たとえばイカやサンマの生産はほとんど北海道・東北に限られています。
アジについてもその生産量の大きな部分が九州北部、中国地方、山陰地方で生産されています。
また、ホッケやスケソウダラについてもその生産はほとんど北海道に集中しています。
その他の魚種についても程度の差はありますがかなり地域性があるといえます。
一方水産物の需要は全国各地にありますので農産物でいうりんごやみかんのように極めて広い商圏を有するといえます。
しかも鮮魚類の輸送には冷凍車や冷凍貨車のような特殊な設備を必要とするために輸送の問題は極めて重要になっています。
3.生産地が浮動的
サンマやイワシ、アジ、サバ、カツオのようないわゆる回遊魚についてはそれが海洋の中層以上の水域を季節的に大きく移動するために、その陸揚げの場所も特定していません。
漁船の根拠地でない漁港への陸揚げが必要になる場合も想定されます。
このようなところでは、生産者が短時間に買い手を見つけることが困難という状況があります。
また、共同行為のできる範囲も限られてきますので漁獲物の販売を安心して任せられる相手が必要になります。
市場がこのような面で重要な役割を果たしているということはいうまでもありません。
4.生産費も不安定
海の状況や漁の状況によって生産量が大きく変動する水産物の場合は、生産費もまた不安定です。
1回の操業に要する経費の総額は事前におおよその部分はわかっていますが、漁獲物の単位当たりのコストというものは獲り終わってみないとわかりません。
それは不漁の場合は生産コストが非常に高くついたりしますし、大漁の場合は相当安値で販売しても十分採算のとれたりするからです。
したがって漁獲量の変動の激しい魚種については漁業者にとって適正価格というものは毎日変わるということになるのであらかじめ値段を出すというのは非常に困難になります。
このようなことは農産物でもありますが水産物の場合はより頻繁にあるといえるでしょう。
まとめ
魚をとって売るということがこれほど難しいものだというのは消費者には伝わりにくいところです。
しかし販売者においてはこの特性をしっかり把握することが必要になります。
水産物の経済的側面から見ても鮮魚の販売においてできることとできないことの判断がつきやすいわけです。
例えば月夜にはアジ・サバの漁がないまたは少ないというのは長崎の旋網船団動きを見ていればわかってきたりします。
能登のスルメイカ船団が獲るいかも青森に陸揚げすれば青森産になったりします。
これらは水産物の経済的側面の話です。
いろんな人の話を聞くことでより理解が深まるといえるでしょう。
近年はその鮮魚に置き換えて養殖物を計画的に安定的に扱う動きが著しくなっています。
SDGsの波と共にさらに広がることも予想されます。
各企業によってその方向性を選択せざるを得ない時代に来ているのかもしれません。
<終わり>
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