なにげに数の子っておいしいですよね。
ポリポリとした食感とシオシオとした魚卵の旨みが口いっぱいに広がってたまらなくおいしいものです。
ただ、年々数の子の消費量は減ってきていると言われています。
まず若い人たちが数の子を食べないと言われたりしています。
実際、お正月以外に食べることはないのかもしれません。
ただ回転寿司やカズチーの大ヒットで数の子のおいしさも見直されてきています。
今回あらためて数の子ってどんな食材?というテーマで少し解説してみたいと思います。
私自身、買付も含めて25年間年末の数の子を売り続けて様々な経験しているのでお役に立てればいいなと思います。
目次
数の子はニシンの卵
みなさんもお正月に数の子を食べる機会があると思います。
その数の子はニシンの卵です。
ニシンといえば1897年(明治30年)が漁獲量のピークでそれはそれは北海道でたくさん獲れたのでした。
今では考えられないですが海一面がニシン色に染まったと言われるほどたくさん獲れたのことです。
そして当時ニシン漁で財をなした番屋の親方が作った家をニシン御殿と呼んだりしていました。
それだけニシン漁は儲かったということです。
数の子の獲れる時期は年1回のみ
ニシン漁は年に1回3月ごろに行われます。
その時期に卵を生みに沿岸にニシンが押し寄せるのを定置網などで獲るわけです。
つまり漁師達はその期間だけニシンを獲るわけです。
言い方を変えると1年間食べていける分をその時期に稼ぐということです。
その時とれた卵(数の子)も1年間持たせるため工夫され、塩漬けという技法が使われたのです。
いわゆる塩数の子です。
数の子はニシンの獲れる地域でグレードが違う
ところが1900年に入ると徐々に水揚げは減っていき、1950年代になるとほとんどニシンは姿を消し、幻の魚とまで言われるようになったのです。
そうすると北海道産の数の子というのもなかなか手に入らなくなりました。
北海道産数の子
北海道産の数の子はポリポリ歯応えがあってとてもおいしいものでした。
いわゆる本チャンと呼ばれる数の子です。
基本海草に生みつけるので流されないよう粘度が高いためにしっかりしているのです。
ただニシンの水揚げが減少すると同時に数の子も減っていったわけです。
入荷量が減るということは値段も上がるということにもなるのでますます北海道産の数の子が手に入りにくくなるわけです。
そうなると、一度根付いた食習慣をなかなか変えることができないわけですから、海外へニシンを求めに行くことになったのです。
カナダ産数の子
で、北海道で獲れたニシンの卵数の子と同じようなレベルのものがカナダで獲れるということがわかったということでカナダ周辺のニシンが獲られるようになました。
それでカナダ産の数の子というものが出てきたのです。
カナダ産の数の子は北海道産の数の子のようにポリポリ歯応えがあるのが特徴でした。
北海道産に似ているということでこのカナダ産の数の子も本チャンと呼ばれたりしたのです。
ところがカナダ産のニシンも次第に水揚げが減っていったのです。
天然資源の宿命みたいなものですね。
そうなるとさらに外地へニシンを求めるようになりました。
大西洋産数の子
それが大西洋でした。オランダが代表的な産地になります。
ところが大西洋のニシンは岩場砂地に卵を生みつけるため粘度も低く、水分も多く含むということでした。
そのニシンの卵が歯応えがなくポリポリ感がないのです。
ということで大西洋産は市場評価も低く品質的にも劣るものというレッテルを貼られてしまいました。
このような形で獲れる地域によって数の子が品質と評価され今なおその価値観が残っているのです。
北海道産 → カナダ産 → 大西洋産
がおいしさのグレード順になるのです。
これが価格順にもなるわけです。
我々も買い付けするときは、
- 北海道産 ・・・ 少ないけど見つけたら買い
- カナダ産 ・・・ 外国産で高いけどやっぱりおいしい
- 大西洋産 ・・・ 食感ないしイマイチだけど安いのは魅力
と思いながら買い付けします。
イメージでいうと、
ちょっと高い数の子だなと思うときは大抵カナダ産です。
オッ!この数の子安いなあというときは大抵大西洋産になると思っていいでしょう。
大西洋産の安い数の子は数の子松前などの味付珍味の材料としては十分おいしいのでそちらの方で重宝されています。
元々数の子を持ったニシンは春に取れるものなので年末に食べる時はまず塩漬けにされて保存されます。
塩数の子
数の子は今ほども述べた通り一年に一回しか獲れないということなので塩漬けにされて流通します。
なので味付数の子も塩漬けされた数の子を使うのでまず塩数の子が製品として先に出てきます。
今の若い人たちは最初から数の子は最初から味がついているものだと思っている人も多いかもしれません。
流れでいうと最初塩数の子だったものを塩抜きして味付けしてようやく食べられます。
なので、食べるときは塩抜きをしなければなりません。
そこが数の子の面倒くさいところです。
贈答用の塩数の子の需要は年々減っている
ニシンは卵がたくさんなので子宝に恵まれる縁起物として贈答用に使われることも多いです。
基本贈答用の数の子は塩数の子です。
ということはもらったりすると自分で塩抜きをしなければいけないということになります。
これが面倒だということで最近贈答用の塩数の子需要はめっきり減っている状況です。
贈られる方もやり方がわからないということもあるんでしょうね。
一応塩数の子の塩の抜き方を紹介しておきます。
塩数の子の塩の抜き方
- 数の子が全部浸るようにボールに水を入れます。
- それを冷蔵庫に一晩入れて置いておきます。
- 翌日、端っこをつまんで食べてみて若干塩っけがあればOKです。
とっても簡単ですね。
ただ塩を抜きすぎてもダメだし塩っけが全くなくなるとそれはまたおいしくないものです。
慣れてくるとほどほどの塩加減はわかってきますが慣れるまでなかなか難しいかもしれません。
あとはだし醤油につけて1日ほど置けばいいだけです。
塩数の子のおいしさはこのだし醤油で決まると言って過言ではないと思います。
自家製の味付けできるのがメリットですからね。
ただほとんどの人が市販のだし醤油を使うようです。
簡単にするには市販の数の子のタレを使ってもいいですし、めんつゆを使ってもいいです。
さらに簡単にするときはうどんのスープを使ったりするという人もいます。
どうしても塩数の子を使わないといけないというときなどは頭の片隅にでも入れておいてください。
塩数の子2大ブランド ヤマニとヤマカ
塩数の子2大メーカーはヤマニとヤマカです。
ヤマニ
ヤマニは井原水産の屋号です。
北海道留萌市を拠点とする数の子の老舗トップメーカーの一つです。
>>井原水産公式HP
最近では多角経営化も図っていてカズチーが大ヒットで有名になりました。
このカズチーは若者ウケする商品が出にくい水産業界的にはまさかの大ヒットでした。
ただ本業の数の子も非常に評価が高いです。
ヤマニの数の子の特徴は腹を上に向けて並べているところです。これは数の子は古くなったり品質が悪いと腹から割れていくと言われています。普通は腹を下にして並べるのですが、ヤマニの数の子は腹を上に向けて並べてます。これはヤマニがそれだけ品質に自信を持てるものだけを厳選しているからと言われてきました。確かにヤマニ数の子は腹が上になっています。
主に関西圏に強いブランドと言われています。
老舗トップブランドということで少し値段が高めで条件も出にくいということで近年後述のヤマカ(加藤水産)に勢力を押され気味のように見えていました。
これはあくまでスーパーのバイヤーの個人的な見解なので実際のところはどうでしょう。
ただカズチーの大ヒットで勢力を巻き返しているように見えます。
\ 昔から安定した人気の商品はコレです /
ヤマカ
ヤマカは加藤水産の屋号です。
加藤水産も業界最大手のトップブランドの一つです。
ここも北海道留萌市旭町に拠点があります。
>>加藤水産公式HP
持ち前の営業力と長年の信頼実績で市場の評価が高いメーカーです。
マーケティング力が高いんでしょうね。
いい商品もたくさん出ています。
関連会社の「やまか」でもいろんな商品が出ています。
最近の勢いはすごいと思ってみてます。
\ スーパーでよくみる数の子がコレ /
塩数の子の選び方 産地とサイズ
塩数の子はまずメーカーで選ぶといいですがそれだけだと情報としてはたりません。
似たようなもので値段が違うことがあるからです。
産地とサイズが大事になってきます。
産地
産地は先ほど述べたように、
北海道産 → カナダ産 → 大西洋産の順になっています。
ブリストルやシトカという細かい地名が表示されている場合がありますがどちらともアメリカのアラスカになります。
カナダ産の品質に近いといっていいでしょう。
形
数の子は本来1尾につき2腹のツイでニシンの腹の中におさまっています。
そしてその数の子は鳥の羽のような形をしています。
なので形が整っているものを1羽といったりします。
本来この1羽が基本です。
ただ完全な形でないものも加工の過程で出てきます。
それを折れ、折(おれ)と呼んだりします。
折れは折れ方、割れ方でさら区別されています。
1折 >2折 >3折 >4折
となって左にいくほど安くなっています。
よくみると表示してあるはずです。
折れももちろん味付数の子にしておいしく食べられます。
ただ細かくなりすぎると数の子松前漬や数の子ワサビ漬などの加工用に使われます。
漬物用という言い方をします。
値段も安いので製品の値段が決まっている商品に重宝するのです。
サイズ
サイズは1羽を基本に、
大 > 中 > 小
分けられます。
大きい順で値段が違ってきます。
もちろん大きい方が高いです。
味付数の子
たくさん作るとなると塩数の子の方が割安ですし自分の好みの味付けができます。
これが塩数の子のメリットですが最近は味付数の子を利用する人が非常に多くなっています。
面倒くさいんですね。
なのでちょっと食べたいでいう人は市販の味付け数の子が十分でしょう。
このときに最初に確認してほしいのが産地ですね。
表面に書いてある場合もありますが、裏の一括表示にニシンの産地が必ず書いてあるので参照してください。
あと値段安いなと思うのは大抵食感のない大西洋産のはずです。
ちょっと高いなというものはカナダ産か稀に北海道産ということです。
ここでも値段が正直ですね。
まあ、つゆの味で食べるものでもあるのであまり気にしない人は気にしなくてもいいでしょう。
数の子関連商品
数の子の入った商品も結構あります。
数の子入り松前漬け
非常に人気の商品です。
松前漬けに数の子が入っていたりします。
スーパーで売っているようなものは大抵大西洋産のやわらかい数の子が入っています。
ただ数の子のゴロッと感があるとうれしいものです。
そのような商品はネットで購入する方がいいでしょう。
この下の商品などは数の子感があっておいしそうですね。
数の子わさび
これも大西洋産の数の子を使うことが多いです。
ワサビのツーンとした感じと大根の食感がクセになります。
数の子の食感がワンポイントになります。
ご飯とよく合いますね。
カズチー他
珍しく水産加工品で大ヒットしている数の子メーカーの商品です。
これは燻製した数の子を使っているので品質は分かりませんがもしかしたら本チャンを使っているかもしれません。
数の子の再成型物
回転寿司の数の子の形がキレイに揃っているの不思議でなかったですか?
あれはバラバラになった数の子を固めて成型しているからですね。
数の子メーカーにおいて数の子を作るときにカスがたくさん出るようです。
それを再度数の子の1羽の形に固め直して寿司ネタにしたりします。
数の子の類似品
数の子は高いものなので加工品にはもっとコストがかからない類似のものが使われたりします。
それもダメというわけでなくてちゃんと表示されておいしければちゃんと価値を生み出すと思います。
過去の歴史や背景も含めいくつかかあるので見てみましょう。
◇ししゃもの卵
数の子の代用品で以前ししゃも(カペリン)の卵が使われていました。
今では、ししゃも(カペリン)の卵の方もメジャーになったので堂々と名前をししゃも(カペリン)の卵と出るようになっています。
焼津の石原水産の商品によく使われています。
◇トビウオの卵
いわゆるとびっ子ですね。
トビウオの卵も数の子の代用品として使われていましたが、こちらも有名になったのでそのまま名称が使われています。
数の子の無漂白は価値あるの?
無漂白を売りにしている数の子があります。
本当にいいものなのでしょうか?
答えを先にいうと確かに良い原料を使っていると思います。
なぜなら無漂白の場合は品物がよくないと汚く見えるからです。
しかしながら言い方を変えると日持ちしないものともいえます。
実際私も扱いますが1ヶ月もすると黒ずんできます。
すぐ使うならいいですが時間を置くようだとあまりオススメしません。
値段もそこそこ高くなるのでそれだけ価値があるかはちょっと疑問です。
数の子の漂白について
ここで少し一般的な数の子がキレイな色をしている点ついて解説します。
といってもキレイな数の子を見慣れているので色の悪い数の子といってもどんなものかわかりませんね。ここは知らなくていいと思います。
知っておいてほしいのは一般的な数の子が漂白されてキレイになっているという点です。
漂白の仕方は色々あるようですが、過酸化水素水で漂白するというのが一般的です。
この過酸化水素水がクセモノなのです。オキシドールもこの過酸化水素水の商品名です。
過酸化水素水は食品添加物としても認められていますが発癌性の問題があるということで一定の条件のもとで使用が認めらるちょっといわくあるモノです。
詳しくはこちら → ウキペディア過酸化水素
数の子にも使われているとのことですがいろんな条件で表示しなくても良いことになっているということでいろんな思惑が介在しているようです。
深入りすると迷宮に入りそうなので話はこの辺にとどめておきます。
ただまあ、ここまで調べてみると確かに生協さんなどが無漂白にこだわりたいというのもわかるような気がしてきました。
無漂白の数の子は品質も良くないと作れませんが黒くなるのも早いので長くは置けない点付け加えておきます。
〈参考論文〉
添加物「過酸化水素」について、食品健康影響評価を 取りまとめ 食品安全委員会
過酸化水素処理 した塩かずのこ中の残留過酸化水素の カタラーゼおよび亜硫酸処理による除去に関する考察 食衛誌vol.22
最後に
ここまで読めばかなり数の子のことかなり詳しくなったと思います。
それでもスーパーに並ぶたくさんの数の子を見ると迷ってしまうかもしれません。
そんなときこの記事のこと思い出していただけるとありがたいです。
今年も数の子安くないと思います。
ぜひおいしい数の子選んでくださいね!
<終わり>