自然界にいる魚を天然物、天然魚といいます。
天然の魚は味もいいですし、化学飼料を使われてもいないので安心感もあり人気です。
みなさんもなんやかんやいって天然の魚の方を買い求める方が多いと思います。
特にご年配者はその傾向が強いでしょう。
しかしながら、天然の資源である以上時に枯渇して取れなくなってしまうことも考えられるわけです。
これからの時代も魚がとれる環境にしていかないといけないという社会的要請が強くなってきています。
いわゆる水産資源の「持続可能性(サスティナビリティ、Sustainability、CSR)」の問題です。
そう考えると天然でとれるお魚に餌を与えて人工的に育てられないか考えるのは当然なことだと思います。
実際事業として成り立つものについては養殖という技術でさまざまな魚が人工的に育てられてきています。
ところで養殖という言葉は馴染みがあるのですが時に蓄養という言葉も使われたりします。
マグロなどで使われることが多いようです。
この蓄養というのはどんなものなのでしょう?
養殖と蓄養は違うものでしょうか?
結論を先にいえば違います。
今回はこの養殖と蓄養について詳しくみていきたいと思います。
養殖とは
養殖と蓄養は水槽や生簀で人工的に魚を育てる行為という点では似ていますが若干違います。
簡単に言えば、卵から育てたかどうかで区別します。
卵から孵化させた魚に餌を与えて育てるのが養殖です。
エビやタイなんかがそうです。卵から孵化させて育てるのです。
いろいろな試みがなされて事業化されているものもありますが、結局養殖するかどうかは採算取れるからどうかが決め手になります。
なので養殖の多い鮭のかなでもたくさん取れて値段が高くできない秋鮭なんかは養殖されないのです。
完全養殖とは
ちなみに養殖した親魚に卵を生ませて育てることを完全養殖という言い方をします。
近大マグロで有名になりました。
このときは親も養殖された魚という点がポイントです。
蓄養とは
それに対して稚魚を自然界から採ってきて餌を与えて育てる行為を蓄養と言います。
ウナギをイメージするとわかりやすいです。
黒いダイヤモンドと言われるウナギはシラスを採ってきて大きくなるまで育てるんでしたよね。
これが蓄養です。
マグロも自然界にいる稚魚、幼魚を採ってきて生簀で餌を与えて育てるので蓄養になります。
痩せたりした個体に栄養たっぷりの餌を与えて丸々太らせて脂をのせるわけなのでこの蓄養にあたります。
ブリもそうですね。
稚魚のもじゃこを取ってきて生簀で育てます。
技術的にはこの蓄養より卵から育てる養殖のほうが難しいということになります。
蓄養は海からとってきた魚に餌をやるというだけですから。
お店での表記はどうなっている?
では、スーパーなどでは両者区別して表記されているのでしょうか?
スーパーでは特に区別せず全て養殖と表示されています。
法律上は蓄養も養殖も区別せず人工的に餌を与える行為を養殖としています。(日本農林規格=JAS法)
実際現場でそれを区別させるのも至難の業と言えるかもしれません。
なので、お店での表記は蓄養と養殖を区別せず全て養殖となっています。
お客さんに対してはそれで十分ですが、魚屋さんとしては実際は養殖と蓄養は区別されるものだということをわかっていないといけません。
実は牡蠣やホタテ貝は養殖でない⁈
ちなみに、牡蠣やホタテ貝は厳密にいうと養殖とは言えません。
牡蠣やホタテ貝を育てる業者は海流の栄養豊富なところを見分けてそこに貝を吊るすだけです。
餌を人工的に与えてないので養殖ではないのです。
ただ、スーパーや鮮魚店では人工的な行為による点では養殖と同様と考えて養殖表示するのです。
最後に
おもしろい話があります。
天然をありがたがる我々の世代に対して若い世代の人たちは養殖の方がいいと思っている人が多いようです。
若い世代の人たちにとっては養殖魚は素性がわかりやすいと言い方をするんですね。
つまり、何を食べているかわかるというわけです。
逆に天然の魚は何を食べているかわからないから気持ち悪いとまでいうようです。
全部の人でないにしろそういう感覚って昭和世代の私たちにとってはメガテンですよね。
持続可能性という言葉とともに養殖魚がこれからもっと普及していくのかもしれません。
「天然、生、地物」の三種の神器はこれから通用していくのか少し不安になりました。
<終わり>
コメントを残す