スーパーマーケットで商売しているとよく荒利率を問題にする場面があります。
具体的にいうと本部が荒利率を上げろと各店舗に号令をかけることがしばしば見受けられます。
「ロス率を下げろ!」、「荒利率を上げろ!」
です。
掛け声の威勢はいいのですがしばらくすると売上高が下がり始めるなんてことが多々あります。
また、同時に荒利高(額)減り始めることがあります。
まあ、これは計画、予算がありそれが結構高かったりするので本部のバイヤーなどはそういう号令を出すのですがこれを受ける店舗としては戦々恐々としてなんとか荒利率をあげようとするのです。
言い方としてはロスを減らせといわれるのです。
ロス率を減らせば荒利率があがりやすいことはあります。※ちなみにロス率と荒利率は対象となる分母がちがうので反比例関係にはない点注意。
それが意に反して逆の方向にいくことがあるのです。
これはなぜでしょうか?
目次
食品小売業の利益の構造
単純にいえば、
売上高 × 荒利率 = 荒利額
となるわけです。
※荒利率をGPR、荒利高をGPと呼ぶところもあります。
なので荒利率を上げれば、売上高が同じであれば荒利額が増えるのです。
荒利額が増えると本部のバイヤーなどは成績が上がるということで褒められたりします。
ただ、売上高が下がっている時にこれをすると大変なことになるのです。
ところがこの荒利率を上げろというのが慢性化したりしてこれだけ言っていれば仕事をしていると錯覚する本部の人が結構多いのです。
チャンと状況も見ずにただ荒利率を上げろ上げろというのはスーパーマーケットではよくあることなのです。
みなさんも相当ひどい経験したことがありますよね。
しかし、実はこれが店が弱体化し、負の連鎖へ導く入口になるというのはあまり知られてないかもしれません。
なぜ荒利率をもとめるのか?
先ほどにも示したように売上高が通常時なら荒利率を上げれば荒利高も上がります。
これはこれで理にかなったことなので異論、問題はありません。
売上高 × 荒利率 = 荒利額 の公式は誰がみても疑いようのないものです。
そのうちの一つを挙げれば全体が上がるというのは間違いではありません。
そして複数店舗あるときにその店がうまくやっているかどうかをみる指標が荒利率なのです。
つまり、より少ない仕入れ(金額)で最大の効果すなわち売上高をあげてるかどうかの指標が荒利率になります。
能力の高い店ほど荒利率は高くなる傾向にあります。
規模も違うお店の荒利額を基準にして、うまくやっているかどうか判断するのは少し厄介ですね。
率ならお店の規模関係なしに判断できる基準になります。
ちなみにここでいう率は効率のことですね。
より少ない労力でより大きい効果を出せたらいいわけです。
それでみる方が本部は見やすいわけです。
そんなこともあって一律に全店舗の能力を見る指標として荒利率で比べるということがスーパーマーケットの本部でよくされているのです。
で、指示を出す本部も慢性化して荒利率しかいわなくなることが結構多いのです。ロスを減らせも一緒のことです。
口癖のように荒利率を上げろ、ロスを減らせといってしまいには荒利額のことは問題にしなくなったりします。
理屈で考えれば荒利額を上げるために荒利率を問題にしなければならないのですが現場では荒利額を二の次にして荒利率しかいわないことがよくあるのです。
ただ、これは先ほども言いましたが通常時かまたは順調に売り上げが伸びているときに強調すべき指標なのです。
ところが売上高がダウントレンドの時でもそれを強要する人がいるのです。
売上高がなんらかの原因で頭打ちになり上がる状況でないときに計画の荒利額を確保しようとして荒利率を上げろというわけです。
これは最悪なことなのです。これをすると間違いなく売上高はさらに落ちていきます。
会議などでもいかにももっともらしく声高に行ったりするのですが意味をわかってないです。
なぜならば、よほど数値コントロール能力が高い人以外はまともに対処できないからです。
荒利率をあげようとすると売上高が下がる理由
売上が下がっているときに本部が荒利率を強調すると店は何をするかを見てみましょう。
- 売場に商品を出さなくなる ・・・ 出さなければロスは出ないと考える。
- 仕入れを減らす ・・・ ロスを怖がって仕入れ自体しない。
- 夕方商品が欠品して棚が空いていても補充しない ・・・ 出せばロスにつながる。
と、こんな風に売上をあげることよりロスを減らして荒利率をあげようとするのです。
もちろん本部にはわからないようにします。簡単にいうと積極的なことは何もしなくなるのです。
確かにこれは好ましいとはいいがたいことだと思います。
ただこれは現場ばかり責めるわけにはいかないように思います。
荒利率を上げろ、ロスを減らせと本部から締め付けられると当然このようなことになります。
当然売上高は下がります。しかしこれがマジックなのですが時間差でタイムラグがあるのです。
少ししてから売上が下がるのです。
で現場としては直近では荒利率は上がるのでそれなりの数字の誤魔化しができるのです。
差し当たってはです。
これを繰り返すとお客さんにあてにされなくなり売上高がさらに落ちて今度は商品を出さなくてもロスが多くなっていきます。結局荒利率も後々は下がっていくわけです。
こんな風に書くと なんでそんなわけないよ!とかそんなことするわけないよ!っていわれるかもしれませんが、大手企業のほとんどがこのような負のスパイラルに陥っているのも事実です。
本当に多いですよ。こういうパターンの企業が。
荒利率をあげようとすると荒利額が下がる理由
そもそも売上高の中に荒利額が入っているんです。荒利額は売上高の一部なんですよね。
その売上高を減らしたら荒利額も当然減りますよね。
まずは売りを落とさない施策をとりながら荒利高をしっかり見ていかないといけないのです。
しかし、荒利率の話ばかりして荒利額をいう人はほんの一握りなんですね。
間違った販売戦略に気づかない無能な本部のいる企業は悲劇
大企業になればなるほど率で店舗を評価するようです。
もちろん、しっかり全体を見ているところもたくさんあると思います。
荒利額も当然みているよというのかもしれません。
しかし、実際のオペレーションの中では荒利率が強調されるようです。
荒利率が高いとニコニコな顔をする幹部が多すぎです。私にいわせればこのような幹部こそがポンコツでしっかり勉強し直してくださいといいたいくらいです。誰もいわないでしょうが。
陣頭指揮をとる人間の器がこのように小さい企業に属する人達にとっては悲劇でしかありません。
現場の人達のほうが打開策もっていることが多々あるのです。
結局ジリ貧になっていくわけです。
実際そういうところいくつもみてきました。
店舗が多くなればなるほどそういう弊害が出てくるのです。
それを防ぐためにも荒利額もしっかり判断基準に入れるという雰囲気にしないといけないのです。
荒利率を強調するだけでなく荒利額もしっかりトレンドを見ること
では、荒利率を上げながら売上高、荒利額をどうやってあげたらいいのでしょうか?
これは不振店対策でとる方法が一番効果的です。
- 売れないものを思い切ってやめる
- 売れるものをしっかり広げて欠品させない
ここから始めるのがいいでしょう。
単純で基礎的なところですが、非常に効果的な方法です。
売れないけど付き合いや割り当てで売らないといけないものも結構あるものです。
それを思い切ってやめるというのが本当は一番効果あるんでしょうね。
本当にひどいようならやめないと命取りになります。
ところが大手チェーン店などは売場のモジュールが決まっていて勝手に売場に出すのをやめることができないということがあります。
この場合は売場の基本商品を再度見直す形になるでしょう。
そして必ず荒利率だけではなく荒利額も昨年比などでしっかりみていかないといけません。
最後に
今回なぜこんな記事を書いたかというと、
魚が売れないというお店が多いところ、なぜ売れないかというと、いわゆる本部の舵取りがあまりに杜撰な企業が多いからと思ったからです。
現場の人たちは結構必死にもがいているというか頑張っているのですが、今回のように荒利率しか見ないとか商いの基本がわかっていない人たちが指揮を取っているわけです。
それを経営トップはそれをしっかり見抜いて根本的な改善を図ってほしいのです。
結局荒利額をしっかり稼いだ企業が勝ちなのです。
雰囲気に流されず判断基準を荒利額(高)にもっていくのです。
その単純で当たり前な思考を取り戻してほしいなと思うのです。
もう一ついうならロスをいくらだしも荒利額が増えていればそれでいいんじゃないでしょうか?
所詮率は効率でしかなくそんなカッコよくできなくてもいいんじゃないかと思うのです。
効率悪くても泥臭く稼ぐというのもダウントレンドの時には致し方ないのではないかと思うわけです。
<終わり>