毎日刺身を作って販売しているリッキーです。
最近本当に刺身が売りにくいです。
というのも連日連夜アニサキス被害の報道が絶えません。
アニサキスの報道を見ない日はないくらいです。
目次
アニサキス問題が社会問題化
そんな影響もあってか魚屋やスーパーで刺身が非常に売りにくい状況になっています。
売れないわけではないですが刺身の種類を相当絞って販売している状況です。
魚屋で売りにくいということはみなさんの食卓にのぼる機会も減るということにもなります。
日本のいたるところでそんな事象が起こっています。
魚の生食にこだわる日本人
確かに被害に遭われた方のことを考えれば事は重大で軽々扱うべきでないと思います。
しかし刺身は日本人が昔から大切にしてきた食文化です。
やっぱり新鮮な魚の刺身はおいしいものです。
魚を販売する立場としてもなんとか冷凍をかけない生のおいしい刺身が販売できないものかと悶々とした日々を過ごしています。
アニサキス問題を解決する「パルスパワー」技術の進化
そんな中で最近パルスパワーでアニサキスを撃退する器械が実用化に近づいたというニュースがありました。
このパルスパワーについては後ほど詳しく解説しますがみんなこの技術に興味と期待をもってみているのは間違いありません。
瞬間電力でアニサキス駆除 熊本大チーム、食品産業で活用目指す
熊本大の研究チームが、瞬間的に巨大な電力を発生させる「パルスパワー」の技術を食品産業で活用しようと研究会を立ち上げた。魚に潜む寄生虫アニサキスを電力で殺虫する装置を開発。生鮮食品をおいしく、安全に楽しめると注目を集めている。
佐賀新聞ニュース 2022年6月26日付
さらにはある程度実用化が見えてきたということでクラウドファンディングも立ち上げたりもして成果を上げているようです。
日本の生食文化を守りたい|新アニサキス撃退法の社会実装へご支援を
世界に誇る日本の生食文化を守るため、さらにはお刺身を食べてアニサキスの激烈な腹痛に苦しむ人を減らすため、本研究もクラウドファンディングも最後まで全力で取り組んでまいります。引き続きの応援とご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
熊本大学産業ナノマテリアル研究所 浪平 隆男(2023年11月15日追記)
READY FOR
いよいよかというところです。
この「パルスパワー」のニュースをスーパーや魚屋の人達はどのように見ているのでしょうか。
スーパー・魚屋はアニサキス問題に戦々恐々
刺身を販売するスーパーや魚屋は戦々恐々としています。
アニサキス問題のおかげでスーパーや魚屋、量販店では無理して刺身を作らないという風潮ができてしまっています。
へたに刺身を作ってアニサキス被害を出すくらいならできるだけ控えたほうが増しという認識です。
実際アニサキス被害を出したお店は行政処分や社会的制裁によってボコボコにされます。
それにもかかわらず個人店などは生の刺身の方がおいしいということであえて冷凍をかけずに生の刺身に挑戦するのです。
しかし、生の刺身はみなさんもご存知の通りアニサキス被害を防ぎようがありません。
良かれと思って刺身を出している人にとっては、このアニサキス食中毒の問題は、
まさに、アニサキスガチャ
ということなんですね。
なので、社会的影響の大きいチェーン店などはおいしいのはわかっているけど生の刺身はやめて、味の落ちる冷凍物でなんとか取り繕うとする店舗が増えているのです。
お客さんの安全を第一に考えるとそうなってしまいます。
またアニサキス被害が出ると営業停止という行政処分を受けたり、会社全体評判にも悪影響を及ぼすということで当然売る方も躊躇したりしているのも事実です。
正直、魚屋や飲食の現場では生の刺身はアニサキスを全部取り除き切れないというのが本音です。
こうなると刺身を売るのをやめるか、おいしくもない冷凍物を出さざるを得ないわけです。
現状では加熱か冷凍しない限りアニサキスの危険があるということになるからです。
生の刺身を食べる以上アニサキス被害を受ける可能性はどうしても避けられないのですが世間はそれを許してくれません。
だからアニサキスガチャという言葉が出てくるのです。
なので色の変わったおいしくもない冷凍物が出回るようになるのです。
そういう選択肢をとらざるをえないわけです。
そんなこともあって現在スーパーの刺身売場で並んでいるのは冷凍解凍の切り落としばかりなのです。
その点、飲食店関係の方がむしろ冒険していると思います。
個人経営だったり規模も小さかったりして社会的影響を気にしてないのかもしれません。
おいしそうな生のサンマの刺身や新鮮でキラキラしたイワシの刺身をガンガンメニューに入れて人気店となっています。
※もちろん慎重な店も多いです。
そんなこともあってか結局最近のアニサキス被害のニュースに出てくるのはほとんどが料理店、飲食店ばかりです。
結構アニサキス被害が発生する可能性の高い刺身を生で出しているわけなので確率論的にも当然といえます。
いずれにしても今までより世の中で売られるお刺身の種類が相当数減っているのは確かです。
刺身(魚を生食)を食文化とする日本人にいいことはない
このようなアニサキス問題は魚の生食を大事にしてきた日本人にとっては由々しき事態だといえます。
昔から魚を生で食べる習慣があった日本人には冷凍の刺身が増えることは決していいことではないはずです。
おいしい刺身が食べたいわけですから。
スルメイカそうめん、いか塩辛、アジのタタキ、サンマの刺身、シメサバ、イワシのぬた、生鰹のタタキなどなど。
これまではこれだけのおいしい刺身や生の魚を食べる習慣があったのです。
まだまだあるはずです。
それが今はすっかり姿を消したか冷凍解凍になって姿を変えて売場に出ている状況です。
日本人は刺身を食べるために、アニサキス被害を最小限に抑える努力はしてきました。
たとえば、ルイベやイカそうめんなどは生活の知恵から導き出された自然発生的なアニサキス対策といえます。
なんとか魚のおいしい刺身を食べるために知恵を絞ってきたのです。
時には命を賭してまで魚の生食に挑戦してきた歴史は非常に重いものといえます。
そんな中でアニサキス被害に遭わないいい方法ないものか刺身に関わる人たちが頭を捻ってきたわけです。
ただ、現状では加熱するか冷凍かけるしか完全にアニサキスを死滅させる手段はないということでした。
そんなとき救世主が現れました。
パルスパワーでアニサキスを撃退してくれるというものです。
これだと生のままアニサキスを殺すことができるというのです。
パルスパワーでアニサキス撃退
パルスパワーでアニサキス撃退とはどういうことでしょうか?
学術的にはいろいろ難しいことがあるのでしょうが、一般の人にもわかりやすくいうと、電流を一瞬で流してアニサキスを焼き殺すということです。
イメージとして効果を期待できそうです。
この情報だけだとちょっとよくわからないと思うので詳しくみていきましょう。
パルスパワーとは
パルスパワーとは雷のような大きな電流を一瞬で流す方法のことをいいます。
パルスパワー(Pulse powerまたはPulsed power)とは、200V(もしくは100V)の高電圧電源から電気エネルギーを一旦コンデンサへ蓄積し、これらをマイクロ秒(100万分の1)~ナノ秒(1億分の1)レベルで取り出すことで得られる瞬間的(超)巨大電力。高電圧大電流ともいう
Wikipedia パルスパワーより
電気をたくさん貯めて一気に出す方法ということです。
ちなみにパルスとは短時間に急激に変化する信号を意味します。
パルスパワーはどんな器械か?
冷塩水生成装置とパルス電源、処理槽で構成される装置のようです。
どんな人が開発したのか?
熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平陸男准教授とジャパンシーフーズ(熊本市、井上陽一社長)が共同で開発しました。
浪平陸男准教授
プロフィール>>日本の研究者 浪平陸男
ジャパンシーフーズ
公式サイト>>http://www.jp-seafoods.jp
ジャパンシーフーズは私たちも取引ある水産加工会社です。
ゴマサバやゴマアジの刺身加工品でお世話になっています。
ごまだれがおいしい刺身で見ればすぐに気づくと思います。
国の支援事業
これらのグループがパルスパワーを開発しています。
2018年から経産省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」の採択を受けた国の支援事業となっているとのことです。
パルスパワーを当てるとどんな感じになるか
実際にパルスパワーで処理するとどんな風になるのでしょうか?
これをみる限り違和感ないですね。
血合のところを見ると加熱したかどうかすぐわかります。
全く色が変わってないので実用化に耐えられるレベルのように思います。
ただこればかりは現場に来てみないと判断しようがありません。
実際案内されたものと現物が違うということはこの業界よくあることです。
パルスパワーのメリット
このパルスパワーのメリットは次の通りです。
- 完全にアニサキスを死滅させることができる
- 一瞬で処理できる
- 大量に処理できるという点にあると思います
完全に死滅
電気で加熱するので完全に死滅させるという点はメリットになると思います。
ただ場所によってムラがないか端や身の中の方で生きていることはないかは実際の現場で検証が必要だと思います。
一瞬で処理できる
これができれば非常に大きなメリットになるでしょう。
むしろ加工会社が恩恵を受けそうです。
大量に処理できる
大量に処理できるとしたらこれもメリット大きいでしょう。
というのも一つずつ見つけて殺すというのは非常に時間と労力がかかります、
パルスパワーのデメリット
パルスパワーのデメリットは次の通りです。
- 品質の問題
- イニシャルコストの問題
- ランニングコストの問題
- メンテナンスの問題
品質の問題
ただ焼き殺すわけですから当然品質に問題が生じえます。
普通で考えて刺身に火が通ってしまいます。
これでは刺身になりません。
ここが最大の問題になるでしょう。
ただ先ほどの写真を見る限り問題なさそうにも見えます。
おそらく一番力を入れているところでしょうからきっと解決されるものだと思います。
イニシャルコストの問題
要は購入費、すなわち初期投資が膨大になるという点です。
ここの解決は汎用性もあまりなさそうなので時間がかかるように思います。
ランニングコストの問題
ここは維持管理費の問題です。
あまり長時間稼働させるものでもないようなのでコストはかからないようにも思いますが電力を貯めるというところの問題はしばらく続きそうです。
メインテナンスの問題
上のランニングコストにも関わるかもしれませんが器械の部品が壊れたときの対応も難しそうです。
実用化の期待は大きい
ただ、アニサキスをしっかり対策しようと考えるとこの技術は非常に大事です。
一瞬でしかも大量に一気にアニサキスを死滅させられる技術はまさに夢のようなものです。
これが実用化されれば間違いなく我々の食生活は向上していくでしょう。
少なくともお刺身好きにはありがたい技術といえます。
一気に実用化に向けて更なる発展を目指してほしいと思います。
欺瞞だらけの現状を克服せよ!
今巷では特殊な光を照らして見つけるという原始的なアニサキス発見法が流行っています。
これで我が社はアニサキス対策をしっかりしていると言わんばかりにアピールするお店も多いです。
しかしながら紫外線ライトを当ててアニサキスを取り除くという方法は表面しか見えないので身の中にいるアニサキスは見つけられないのです。
不完全なアニサキス対策です。
やらないよりやった方がいい程度のもので「しっかりやっている」には程遠いものだと思います。
しかも魚の身を一枚ずつチェックしないといけないのです。
これは非常に手間がかかります。
魚屋の現場でやる魚の量はそれなりに多いです。
そんな面倒臭いこと魚屋の現場の人たちがするはずありません。
最初やったとしても最初だけで1週間もたてばちょうどいい物置になっています。
それでいかにもやってるアピールをして消費者を欺こうとするのはまさに欺瞞といえるでしょう。
単なるアリバイ作りに勤しんでいる店舗や会社が多すぎます
全くもってナンセンスです。
この状況を克服する上でもこのパルスパワーの期待値が高いいえます。
リッキーの感想
おそらくもう少しなんだと思います。
品質レベルは解決しているような気がします。
おそらく採算ベースでコスト面の課題が残っているのかなと想像します。
ただ、店舗や現場レベルでの導入はまだまだ遠い先でしょうね。
器械が高額すぎておそらく市販するのは難しいように思います。
ただジャパンシーフーズさんのような大手の水産加工会社が使えるようになるだけでも状況は変わると思います。
会社が大きかろうが小さかろうが加熱冷凍かけない限り生ではどうしても「アニサキスガチャ」みたいな状態です。
大手だけでも早く実用化できたら随分今の刹那的な状況が変わると思います。
最後に
本当にアニサキス問題はこれから日本人の食生活を大きく変える可能性が出てきました。
近海でとれた安い魚の刺身を食べられない。
そんな状況は間違っても来てほしくないです。
いくら養殖物がブームだといっても天然を凌ぐ量は生産できないのですから。
天然物を大事にしていきたいものです。
<終わり>
\ アニサキス詳しく書いた記事はコレ /
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