お盆や年末はスーパーにおいても刺身盛合せの最重要需要期です。
刺身盛合せをいかに売るかによってお盆期間、年末期間の鮮魚の売上UPが左右されます。
刺身盛合せはその店の刺身の技術レベルが結集されているということでみなさん日々鍛錬されてきたことだと思います。
ストアローヤリティ(店の信頼)が高い店は予約注文が多いでしょうがこれが低い店は刺身盛合せの期待値が少ないわけです。
今回紹介する3項目を意識するだけで刺身盛合せのイメージがガラリと変わるのでぜひ今から説明する内容をご確認ください。
刺身の教育体系がしっかりしているところは既に確認済みかと思います。ただあまり教えてもらえない、もう少し勉強したいという人も多いと思いますのでここで確認してみましょう。
刺身盛合せ造りの重要ポイント3選

刺身盛合せ造りのポイントはいくつかありますが重要なのはこの3項目です。
- 大根のケン(敷きツマ)の使い方
- 山のバランス
- 解凍のタイミング
重要な順に並んでいます。
刺身盛合せの見栄えがよいかどうかは、大根のケンの使い方にかかっていると思います。
これが一番重要と考えます。
たま見た目でいうとポイント2の山のバランスも非常に重要です。これをマスターすれば翌日ありがとうといわれるような素敵な刺身盛合せが作れるようになります。
ポイント3は作業効率の話です。初心者が失敗しやすいところです。
この3点を意識するだけで刺身盛合せの作りやすさが断然変わります。特に刺身を始めたばかりの人に意識してほしいのです。
それぞれ解説します。
大根のケンの使い方 ポイント1

刺身盛合せで一番需要というか見栄えに差が出るのが大根のケンの使い方です。
刺身の切り方や盛付け方も重要ですが結局のところのこの大根のケンの使い方、盛り方で決まります。
逆にいうとみんなケン使い方が下手だから上手に見えないのです。
手前を低くく奥を高く立体的に盛り付ける
のが正解です。
どうしても刺身がうまくいかないという人はまずこの大根のケンの盛り付け方をしっかりマスターしてください。
みなさん切り方や盛り付け方に目が行きがちですが実はこの大根のケンの盛り方が最も重要なのです。
山は個別に盛り付ける
前提として刺身は個々に盛り付けます。
これが基本です。
ケンの量は一握りで楕円にするのがコツです。
この点関西方面では平に敷いたケン(ツマ)に盛り付けたりします。
それはそれで土地柄ということなのでその形でいいと思います。
また、一部大手スーパーでも効率を考えてケン(ツマ)を一つづつ盛らずに敷くように指導するところもあります。
効率を重視するやり方です。
熟練の技術もいらず誰でもできるので確かに効率はいいと思います。
ただ平らに盛るので見栄えは二の次になります。
刺身の美しさは特に求めずとりあえず刺身の形をしていればいいと考えるのです。
そういうところは概して削ぎ切りで盛合せを作ります。削ぎ切りは平切りと比べて技術がいらないからです。
経験少ない人でもできる点が合理的といえます。
こういう実(じつ)をとる考え方もそれに徹するのならありと思います。
ただそれ以外の場合は個別の山に盛り付けるというのが刺身盛合せの基本と考えてください。
手前を低く奥を高くする

刺身盛合せを見ると奥の方が下がっているものをよくみます。
やっている時は気づかないかもしれませんができた後みると刺身のそれぞれが後ろにお辞儀していたりするのです。
これでは緊張感ない盛合せになってしまします。
キリッとした刺身にしたいです。
その場合刺身の切り方というよりは先ほど説明した大根のケンの盛り方が影響しています。
大根のケン自体手前を低く奥を高くするように意識しましょう。
上の写真はスーパーの刺身ではありませんがイメージとしてはこんな感じです。
高さがあってもフタは閉まらないことはないので心配ありません。
しまらないとしたら造り方が違っています。
山のバランス ポイント2

刺身を切る方に気がいって山のバランスを意識しないことがあります。
自分で上手に作れたと思っても周りの人に評価されないのはこのバランスが悪いからです。
これを解決する方法は点と線を規則正しく並べるということです。
どういうことか過去記事で詳しく解説しています。
こちらを参照してみてください。
解凍のタイミング ポイント3
実はお盆や年末の盛合せづくりではこの解凍のタイミングが一番重要かもしれません。
初心者が失敗するとしたらココです。
というのがスーパーのお盆、年末の刺身盛合せでは解凍品が中心になります。
解凍品という場合、マグロやサーモンになります。
この解凍品はとかしすぎてもダメだし硬すぎてもダメなのです。
適度な硬さにするタイミングが難しいのです。
解凍タイミングが悪いとどうなるか
これらは冷凍で保管されているので解凍しないといけません。
計画的にしない解凍しないと固く凍ったサクを使わないといけなくなります。
特に冬場はなかなかとけてくれなくて四苦八苦します。
そうなると時間も遅れ遅れになります
慌てて解凍しても芯が固かったりスライスしたものが並べにくかったりします。
しまいにはバラバラにまとまりなくなったりします。
しかも刺身自体も水っぱいものになってしまいます。
とりあえず切れたとしてもトレーの中がドリップだらけになってしまいます。
家に持って変えるとドリップが刺身トレーの底に溜まっていたりして買った人は残念な思いをします。
クレームになることもあります。
最悪次の注文がなくなる憂き目にあったりするのです。
溶けすぎても切りにくい
また、逆に溶けすぎても切りにくいものです。
溶けすぎたものはリズム良くきれずに結局製造スピードが遅くなってしまいます。
適度な解凍状態というものがあるわけです。
その意味で刺身盛合せは解凍の段取りが非常に重要なのです。
付け加えると、養殖物も一緒です。
必要な分を計算しておかないと後一山、一切れ足らないために、急いでブリをおろさないといけないという羽目になってしまいます。
その他チェック項目

刺身盛合せは他にもテクニックがあります。
そのほかのポイントもチェックしておきましょう。
刺身盛合せはスピードが命

とにかく最需要期の刺身盛合せはスピードが命です。
段取りよくしなければ時間までに間に合わずお客さんに迷惑をかけるということもあるのです。
一つの失敗が全体に響いていくものです。
自分たちもオロオロになってしまわないように解凍タイミングだけでなくおろしものなどの刺身材料の準備はしっかり計画しておきましょう。
そのためにも当日使う分はスタートの時点で9割がた用意しておくこと。
具体的にいうと必要なものを解凍し、おろしものをおろして皮を引いておくということです。
残りの1割で微調整するようにしましょう。
例えば冷凍物であれば完全に溶かさず冷蔵庫に移しておいたりということです。
もし使わなくても少ししか解凍してなければまた冷凍庫に戻せます。
ただしマグロは少しでも解凍したら使ってしまわないといけないなので最後に判断します。
大根のケンは見えてはいけない

大根のケンはパンツのようなものと言われることがあります。
刺身を裏で支えるもので人前に見せるものではありません。
白い大根のケンが見えまくっている刺身盛合せはみる人がみると興醒めします。
寿司でいうシャリを見せてはいけないというのと同じです。
意外と意識されてないところです。
一般の人も気づかないかもしれませんが上級レベルになるとここもしっかり意識しましょう。
上の写真は師匠の西村先生の作です。
ここまでいけないにしても大根のケンを見せない意識が大事です。
刺身盛合せはヒラ作り

刺身盛合せはヒラ作りが基本です。
最近のスーパーでは比較的技術のいらない削ぎ切りが流行っていますが削ぎ切りはだらしなく見えるので盛合せには本来向きません。
若い層が多いスーパーならそれでもいいでしょうが本格的な刺身盛合せとして評判になるようにするならキリッと角のたった平作りの刺身盛合せにするべきです。
もちろんネタや状況によってソギ切りする場合もありますが可能な限りヒラ作りでするようにしてください。
盛合せに使うサク選び

特に盛合せには形のいいサクを使いましょう。
出来るだけ長方形の幅調整をしなくてもいいサクを使いたいです。
三角形や台形のサクはできるだけ店売りに回しましょう。
刺身一切れのグラム数
一つあたりの刺身一切れのグラム数は各店で決まっていると思います。
通常は10〜12gです。
切り方によってはしょぼくもなるし立派にも見えます。
大きめにするときは15gまででしょう。
一切ずつ量れればいいですが時間がないときは山単位で確認すればいいです。
慣れれば大体の重量わかるようになります。
いわゆるここがしっかり管理できてないと利益も垂れ流しになるので普段から神経使いましょう。
検定があるところもありますが、意識しすぎて時間が遅れ遅れになるならスピードを優先したほうがいいようにも思います。
ここは企業で考え方が違うのでなんとも言えないところです。
切り数は奇数

縁起を担ぐ場面で食べる刺身盛合せの切り数は奇数であるべきです。
知らない人も多いと思いますが昔からそういう言い方をされています。
ここは刺身の流派などに関わりますが深く考えずに奇数が基本という知識だけでも持っておけば十分です。
しかし最近はそんな縁起は気にせず値段を優先して偶数にする場合もありますのでその時はお店の指示に従ってください。
目立つ色を左に配置

目立つ色を左に配置するのが基本です。
人の視線の動きというものは左から右に移動するものだからです。
目立つ色は赤色です。
赤色の刺身といえばマグロですね。
すなわちマグロの刺身を左に配置するのが映える刺身になります。
しかも奥の方から視線が斜め下に移動します。
なので二列三列にする場合は左の奥に置くのが正解です。
角が立った刺身
信頼される刺身盛合せの刺身は角が立っています。
もちろんヒラ作りで切る場合です。
削ぎ切りにして角が立つという言い方はしません。
これは素材の鮮度もありますがテクニックでもあります。
ヒントは包丁を背を少しだけ左に向けて切ると角が立ちやすいです。
①包丁の背を少し左に向けて、②包丁の刃元から入れ、③滑らすように全体を使って、④包丁のおもみで切って、⑤かえすと切り口もキレイになり角がたちます。
この技は結構使えますよ。
規則正しく並べる
刺身を切ったらそれら規則正しく並べるとキレイに見えます。
刺身の端を点とみてそれを繋げてみると規則正しく並んでいるかどうかがわかります。
下の記事に詳しく書いてありますのでさらに深く知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
刺身盛合せに入れてはいけない刺身

刺身盛合せはハレの日に食べるものです。
家族で集まったり、大切な人をおもてなしたりする時に使われることが多いものです。
おかしな刺身盛合せだったら買った人のメンツも丸潰れになります。
なので次の刺身は入れないようにしましょう。
- スジや打身の跡がある刺身
- スルメイカ、カツオたたきなどの安いネタ
- 鮮度のおちた刺身
特にバチマグロのスジや血栓には注意したいところです。
こういうお刺身本当に使うことあるのかと思うかもしれませんが結構使っているところがあります。
まさにしっかりとした指導がないスーパーなどです。
刺身担当者に任せっきりだったりします。
本人が悪いというよりそこまで目が届かない体制が問題なんだと思います。
次から買わなければいいだけなのですが同業として残念な思いになります。
私の先輩で盛合せが売れず5点盛りを6点盛りで同じ値段にしたら売れるだろうと言ってサービス盛合せ作っていた人がいました。
その盛合せをみたら上の3点が入っていました。
売れるわけないですね。
そもそもの考え方が違うと思いました。
まとめ
スーパーでもちゃんとした教育体系があるところばかりでありません。
ちゃんとした教育体系があるところでも集団講義で一回説明して終わりといった感じです。
実際にやる時にわからないということが往々にしてあると思います。
刺身を教えてくれるコンサルに依頼するとなかなかな料金もかかります。
じゃ先輩に聞いたらどうかというと、魚屋特有の細かい技術は他の人には教えてくれないという悪しき慣習があります。
でも刺身を作る人たちはもっと色々知りたいわけです。
「さかなのさ」はそんなやる気のある人たちを応援したいわけです。
なのでこういった感じで無料で有益な情報を提供しているのです。
この書かれている内容を見て勉強してぜひ自分達の手柄にしてほしいのです。
また企業に対しても応援したいと思っています。
しっかりと刺身を強化したいという強い想いがある企業様でしたらご相談の上協力させていただきます。
鮮魚の運営に関してはまだまだ経験に裏付けされたノウハウたくさんあります。
どうぞお気軽にお声をおかけください。
<終わり>