おそらく日本人が最も好きな海老の一つがこの甘えび(ホッコクアカエビ)です。
刺身用海老としては馴染み深く人気の海老といえます!
北陸にいったら必ず食べてほしい日本海の美味しい海の幸と言えるでしょう。
甘えびのことはよくご存知な海老だと思います。
しかしながらまだ知られていない情報・裏情報もたくさんあります。
世の中にあまり出回ってないおいしい食べ方もあります。
今回鮮魚の達人があらためて甘えびの特徴を紹介したいと思います。
この記事を読み終わる頃には相当の甘えび通になれるでしょう!
甘エビの基本情報
分類 | 十脚目タラバエビ科タラバエビ属ホッコクアカエビ種 |
名称 | 甘えび |
別名・地方名 | ホッコクアカエビ(標準和名)、南蛮エビ(新潟) |
英語名 | Alaskan pink shrimp |
学名 | Pandalus eous(Makarov,1935) |
分布 | 島根県以北 日本海沿岸 オホーツク海 ベーリング海 カナダ西岸 |
主な漁法 | 底曳網漁、カゴ漁 |
備考 | ・性転換する ・熟成した方がおいしい |
甘エビはどんな海老?
まず甘えびの基礎知識を覚えましょう。
というのも甘エビは実に面白い生態を持っているのです。
甘エビの生息地
まず生息地は水深200〜600mほどの深海砂泥底です。
とても冷たいところで海水温0〜8℃に生息しています。
甘エビの産卵期
春から夏にかけてが産卵期。
卵を十ヶ月ほど抱えているので常に子持ち甘えびがあります。
実際、ほぼ毎日市場にあります。
市場では卵を持ってない甘えびと子持ち甘えび両方あるわけです。
甘エビが子(卵)を持たない時期
これはあまり知られていない情報です。
子を離すのは2〜3月ごろです。
その時期だけは子持ち甘海老の入荷がありません。
だいたい1ヶ月くらいだと思います。
またこの時期は殻も柔らかく品質的にも不安定な時期になります。
ちなみに上記は北陸地方の話です。他の土地については未確認です。
甘エビは生まれた時はみんなオス
実は甘えびは性転換します。
生まれた時は全部オスで、5〜6年経つとメスに性転換するのです。
すごいのは群の全体を様子を見て一定の割合だけメスに転換するという点。
メスが多い時はオスのままで性転換しないということです。
どうしてそれを判断するのかはわかりませんが社会の雰囲気を読む力があるようです。
甘えびのエラが膨れているのは?
毎日甘えびを扱っているとエラが異様に膨れている個体を見ることがあります。
ちょっと違和感ある膨らみ方なのですぐわかります。
別に頭はほとんど捨ててしまうので問題になりませんがそこにはエビヤドリムシという寄生虫が潜んでいるのです。
怖くてみたことは今までないです。
甘エビの寿命は11年ほど
こんなに小さくて可憐な海老が10年以上生きるということです。
驚きますね。
素人の想像ですがおそらく冷たい深海にいるので動きや代謝がほとんどないから組織が長持ちするのだと思います。
甘エビの話題・トピック
甘エビにまつわる話題・トピックを少し紹介します。
新誕生!金沢ブランド海老 金沢甘えび
2020年10月金沢甘えび誕生!のニュースが放送が報道されていました。
新ブランドの誕生ということで金沢で商売している身としてはしっかり盛り上げていきたいところです。
- 金沢港に水揚げされたもの
- 大きいか子持ちのもの
- 漁の最後にとったもの
この3つの要件を満たしたものだけを金沢甘えびと呼ぶようです。
ただ、今のままだと同じような甘えびも普通に流通しているので金沢甘えびと他の甘えびの区別できません。
写真の箱についたシールだけでブランド化はちょっと頼りないような気がします。
誰かが管理統制しないとブランド化は担保できないでしょうね。
おそらく老獪なベテラン販売者は金沢甘えびでない甘えびも金沢甘えびといってごまかして売るでしょう。
ただ、金沢のもりもり寿司、まいもん寿司、すし食いねえなど金沢ゆかりの回転寿司店がこれから力を入れてアピールするようなので名前は広まるかもしれません。
金沢港の甘エビはかつての評判がいまいち?!
実は金沢港はかつて甘えびについて悪名高い産地でした。
「かつて」と注釈入れておきます。
残念な情報ですが以前からあまり評判が良くなかった産地であることは周知の事実です。
というのも甘エビは箱ごとに取引されるのですが、そのトロ箱の上だけ大きいサイズのものをおいて下の方に小さいというか細かいものを置くというようなひどいやり方が横行していました。
そんなことを当たり前のようにやっていた港です。
特定の船だけだったのかもしれませんが実際何度も買い付けして嫌な思いにさせられました。
ここも一応「昔は」と注釈入れておきます。
だからプロの間で実情を知っているものからの信用はないです。
今頃になってそんなブランドと言われても!というのが末端の率直な思いです。
世代交代して浄化されたのでしょうか?
そんなブランドを作るくらいならいい加減なことをする船をなんとかする方が先でしょ!
って思います。
逆に写真の瑞祥丸は買付人から非常に信頼のある船です。
この船は評判が非常にいい船です。
大きさが均一で揃っているところが評価されています。
もちろん扱いも上手で色もキレイなのが特徴です。
取引価格も少し高めです。
このように瑞祥丸のようにちゃんと誠実にやってほしいものです。
福井のブランドがしっかり確立されているのも大きさ規格の統一がしっかりできているからです。
金沢港ブランドをしっかりしてほしいからこそあえて苦言を呈させていただきました。
これからに期待したいです。
石川県富来港のカゴ漁
1月6日解禁
深紅の活きた甘えびが水揚げされることで有名です。
真冬の甘えびとして人気です!
2024年の能登半島地震で被災しましたが被害が他よりも小さかったことでなんとか稼働はしています。
甘エビの食べ方
甘えびのおいしい食べ方といったら皆さんご存知の通り刺身ですよね!寿司もおいしですね。
能登では2月にカゴ漁というのやっていて金沢の中央市場にも活きた甘えびが入ってきます。
その活きた甘えびを食べることがあるのですが、正直おいしくとは思えないです。
プリプリで食感はしっかりあって食べた感はあるのですがほとんど甘味はありません。
むしろ3日ほど経った甘えびの方が甘みも強くなっておいしいです。
こんなこというと、
何言ってるんだ新鮮な方がおいしいに決まってるのにもったいぶって気に入らないな!
と反感買うかもれませんが、本当にそうなんですよ!
海老を刺身にするなら水揚げから3日目くらいがおいしいんです!
頭をとったあと真水でしっかり洗ってから皮を剥けば3日目でも鮮度の問題は全くないですよ!
後で詳しく解説しますが甘エビを昆布じめにしてもおいしいものです。
尾が付いたままなら普通の昆布でいいですし、尾をとった場合はおぼろ昆布でしてもやさしい味になります。
日持ちをさせたいときにと重宝します。
甘エビの買い方
おそらく島根以北の日本海側にいけば魚屋さん、スーパーでも市場風店舗でもおそらくほとんどの店は入荷さえあれば売っていると思います。
ただ、やはり鮮度がよくてお買い得な店で買いたいと思うのは当然なので地元人気のスーパーの方がいい甘えび売っていると思います。
この甘えび鮮度が悪くなると色が黒くなりますから鮮度の見極め方はそんな難しくないと思います。
あとよく刺身になりますか?と聞かれることがありますが、基本的に頭のついているものなら刺身に当然なります。
逆に刺身にならない甘えび売っている店があるとすればその店で買うのはやめた方がいいと思います。
ちなみに写真の甘えびは少し白いです。
鮮度が悪いわけではありません。
氷をあてるのに時間がかかったとか雨に当たったりするとすぐに赤い色がとんで白っぽくなります。
入荷時点で甘えびをとった船の扱いの良し悪しが出るものです。
赤い色は自然の色?
甘エビの売り方
甘えびほど相場が乱高下するものはありません。
昨日子持ち甘えび1尾20円だったのが翌日60円になるということは日常茶飯事です。
逆に100円のものが30円になることもザラです
それだけ怖いものですが、一定の金額を決めて安い時だけ仕入れるというやり方もありだと思います。
高い時は我慢して安いときにしっかり安く売るということをしていけばお客さんついてくれ流でしょう。
基本的に甘えびの値段はスーパーなら1パック398円までです。通常は298円でもいけると思います。
確かに対面などでは480円、580円で売るときもあります
しかしながらパックの時は398円までです。
それ以上の値段をつけると結局残って皮を剥くというしんどい作業が増えることになります。
それなら量目を減らしたり半分にしたりして398円以下にした方が後々楽です。
決まりではないですが仕入値で3,000円以上なら尾数で値段を付けて、それ以下ならパック数で箱割りして値段をつけるのが甘えびの価格設定の基本と考えます。こう考えると売りやすくなります。
また、基本甘えびは持ち越しできません。残したとしても1日までです。
それ以上在庫持ついうことはあってはなりません。
入荷した翌々日はそのままではもう商品価値ありません。
皮を剥いて刺身にしないといけません。
北陸では甘えびを制するものが市場を制する!
甘えびは戦略的には重要なアイテムになります。
近くに甘えびをたくさん売る鮮魚が強い店があるとその周りの店の甘えびの色がどんどん悪くなっていきます。
つまり魚が売れる店は鮮度がどんどん良くなって魚売れない店は甘えびのような鮮度がすぐわかる魚の鮮度がどんどん落ちて信頼を失っていきます。
素人でも鮮度がすぐわかるからです。
だから何がなんででも甘えびを地域で一番売れる店にしないといけません。
特に日本海側のスーパーでは甘えびを制するものが市場を制するといえます。
知らなかったという方は甘えびについての考え方をいますぐ見直しましょう!
甘エビの商品化
甘エビの商品作りは多種多様です。
刺身から昆布じめまでいろんな商品化が可能です。
同時に販売するアイテムとしても知っておかないければならないでしょう。
甘エビは刺身に華を添える
やっぱり甘えびは色合いやその姿からとても華やかさを出してくれます。
いろいろな刺身を見てみましょう。
リッキーがよく使う写真です。ここでも甘えびが上手に使われています。
リッキーの昔作った刺身北陸では甘えびがは必須ですね。
甘えびの昆布〆め
甘えびの昆布〆めもおいしいです。
写真の昆布〆めはこれから作るところです。
卵がついていますが日持ちをさせる時は外した方がいいでしょう。
出来上がると昆布の色がついてもう少し飴色になります。
普通の広昆布(真昆布)を使っていますが甘えびが昆布の味に負けてしまうのでおぼろ板昆布を使う日ことも多いです。
その方がそのまま食べれるのでおいしいかもしれませんが、リッキーも広昆布でやったものも好きです。
尾を外しておぼろ昆布でやる方法もあります。
普通の昆布では甘エビのおいしさが昆布の旨味に負けてしまうという言い方をする人もいます。
いずれもおいしいのであとはお好みですね。
甘海老の素干し
鮮度のよくないものは頭の周りから黒ずんできます。
そもそもこの商品は需要があるのだろうか?考えてしまいます。
1袋でも600円前後する結構高いものです。
作る手間を考えれば当然だと思いますがだしとりだけで使えるところはなかなかないかもしれないです。
炒ったら香ばしくて美味しそうです。
最後に
甘えびはカニと並んで海鮮の代表格です。
この美味しさを享受できることは幸せですね。
北陸お越しの際はぜひ新鮮な甘えび食べてみてくださいね!
9月以降がおすすめです!
一応北陸で刺身がおいしいエビとしてこのエビもチェックしておきましょう!
参考サイト ぼうずコンニャク市場魚貝類図鑑
<終わり>
真っ赤で鮮やかな色合いは見た目に華やかで食欲をそそります。