今回は刺身について解説します。
生鮮スーパーマーケットにおいて刺身は戦略的に最も重要なものになります。
具体的にいうと鮮魚における刺身カテゴリの構成比の拡大です。
というのはこの刺身のグレード、品質、品揃えをいかに設定するかによってその店のイメージ・店格が良くもなるし悪くもなるからです。
刺身によってその店のレベルが決まると言って過言でないのです。
寿司でも魚惣菜でもなく、まさしくこの刺身がメインになるわけです。
目次
日本のスーパーマーケットの核心が刺身
日本のスーパーマーケットにとって刺身は非常に重要で要となるカテゴリです。
究極のところ刺身良し悪しによって店の存在価値が決まると言っても過言ではないと思います。
というのも、令和の時代になってホームセンター(HC)やドラッグストア(DS)でも食品を扱うようになって業態の垣根がなくなってきています。
スーパーマーケットがスーパーマーケットであり続けられる最後の砦が鮮魚であり刺身なのです。
HCやDSでは鮮魚、刺身は構造的体質的にクオリティを上げるつまり攻略できないからです。
理由については以前書いたこの記事↓が詳しいです。
→ドラッグストアやホームセンターが魚を売ってもうまくいかない理由
話を戻しますが、いずれにしても刺身をどう考えるか、どう位置付けるかがスーパーマーケットにおいて生き残りをかけた分水嶺になるのです。
刺身の役割
まずは刺身がどんな役割を果たすのか確認しましょう。
刺身の役割としては次の2つの視点があります。
- お客さん(利用者、購入者)
- 店舗、部門
この2つの視点を分けて説明します。
刺身の役割 〜お客さんにとって
刺身は我々の生活に次のような役割を与えてくれます。
それぞれ見ていきましょう。
食としての役割
人の生命を維持してくれる食糧としての役割があります。
貴重なタンパク源として必要なものです。
単調な食生活にならないためにも刺身は一定の効果を発揮してくれます。
おいしいものを食べられる喜び
刺身ならではのおいしさというものがあります。
日常生活の中で刺身を食べることでひとしおの喜びを感じます。
それだけ刺身は生活にはりを与えてくれる存在ということです。
人生のイベントに貢献
冠婚葬祭はもちろん、人生の晴れの舞台でお刺身は登場します。
刺身を囲んで人々が集まるシーンが様々なところで繰り広げられます。
ということは刺身で一定の期待をされると寿命の長い商売が可能ということになります。
食文化としての役割
刺身は魚の生食という意味で世界的にも希少な食習慣であり食文化です。
様々な食べ方があり、それが蓄積されると一つの文化として発展していくことになります。
しいては社会の持続的継続に大きく貢献できるのです。
刺身というものの存在意義が今後もクローズアップされていくものと思われます。
刺身の役割 〜店舗、部門にとって
刺身は店舗運営や部門運営にとっても重要な役割を果たします。
次のように考えます。
- 刺身は店全体の鮮度感を向上
- 営業数値に貢献大
- 季節感と売場の変化を演出
- 顧客獲得の最大手段
- トレンド対応
刺身の底力実力が見えてきます。
店全体の鮮度感UP
いわゆる鮮度感を上げるものと考えます。
刺身のよければ、他の生魚の鮮度もよく見えるし部門全体、店全体の鮮度信頼を向上させてくれます。
カラーコントロールにより売場を華やかにもしてくれます。
全体的なイメージを底上げする意味で一番有効な機能と言えます。
ただ、刺身が悪いと逆効果で店全体の鮮度感も奪ってしまう可能性あるということでもあります。
営業数値の向上
刺身は売上にも貢献し、利益の安定化に資するといえます。
店の運営面からも貢献度高いということを意味します。
攻める鮮魚売場作りでは生魚の構成比の方が高くなりますがそれでも刺身もそこそこ高い構成比になります。
季節感と変化
季節のイベントと連動し売場を変化演出しメリハリをつけてくれる
節分、ひな祭り、卒業卒園、新生活、母の日、お盆、暮れ、新春など
イベントと結びついて様々の生活シーンに重要な役割を果たします。
顧客化
まさに冒頭にも述べたように同業態だけでなく異業態からの脅威を跳ね除けるだけの力があります。
さらに味で顧客を魅了することもできれば遠隔地からの来店も期待できます。
トレンド対応
刺身の副材料の商品化で海鮮丼、ちらし寿司、カルパッチョ、漬け、サラダなど様々な料理に使えるようになっている。
単に刺身としてそのまま食べるだけでなく新たな料理を提案しやすくなっています。
このように刺身の役割が見えてきました。
刺身のあるべき姿
これらを総合的にみて考えると、刺身のあるべき姿は次のようになります。
- 刺身の加工技術が優れていること
- 盛付が遠近法で作られていること
- 素材のシズル感が出ていること
- あしらいが上品に添えられていること
- 単品で15品種以上の品揃えがあること
- 盛合せが5品目以上品揃えされていること
- 貝類の刺身があること
- 目新しいチャレンジされた刺身があること
- 手巻き・チラシ寿司ネタセットがあること
- 季節感のある刺身があること
- 松竹梅の価格帯があること
- 手板などで表示がされていること
- コトPOPが付けられていること
- 季節の演出がなされていること
という感じになります。
あくまで最高レベルの形です。
この中から選択して刺身売場を構成して個性を作っていくことになるわけです。
刺身になる魚
刺身になる魚については基本的に鮮度が良くておいしい魚です。
ただそれ以外にも条件があります。
注意すべき点です。
詳細はこちら記事でご覧ください。
刺身になる魚の種類
刺身になる代表的な魚の種類は次のようなものがあります。
タイの仲間、マグロの仲間、カツオの仲間、ブリの仲間、サーモンの仲間、ムツの仲間、ハタの仲間
ヒラメ、キンメダイ、スズキ、クルマダイ、イサキ、タチウオなどまだまだたくさんあります。
長い魚(ウナギ、アナゴ、ハモ)は血液に毒があるので基本刺身にしません。
刺身になる魚介類
刺身になるのは魚ばかりではありません。
貝類、甲殻類(カニ、エビ)、軟体類(イカ、タコ)も含められます。
ナマコやホヤなども含まれます。
海藻類もあります。
刺身にしてもおいしくない魚
イカでも刺身にするとマズい種類のイカがいたりします。
カマスも秋以外は水っぽくておいしくありません。
普段はおいしいけれど産卵後の魚などは身が痩せたりしておいしくないものがあったりします。
いわゆる焼け、のり、白太の身をした魚もおいしくないです。
なにがなんで刺身というわけではなく時期や状態で判断する目も養いましょう。
刺身の種類
刺身の種類をまとめるとこのようになります。
- 単品
- 盛合せ
- アラカルト
- 姿造り
- 切落し
- 昆布じめ
- 酢じめ
- 子付け
- 炙り
- 湯引き
まだあると思いますがまずはこれのくらいで管理するといいでしょう。
こう分けることによって利益状況が把握しやすくなります。
またこれに従って売場レイアウトが作られていきます。
刺身と造り
基本的に刺身も造りも同じです。
刺身の歴史を見るといろんな説明の仕方があります。
ここにこだわる人もいます。
しかし現在では地域での呼び方の違いと理解すればいいでしょう。
関西方面では造りということ多く関東他では刺身と呼ぶ傾向があるようです。
ちなみに関西は刺身を盛り付ける時平たく盛る傾向があるのに対して関東は立体的に盛り付ける傾向があります。
これも予備知識的に覚えておけばいい程度です。
この辺は研究者に任せて我々は作る技術を学んで売ることに集中しましょう。
刺身盛合せのパターン
刺身の盛合せの展開の仕方によって売上の上げ幅も変わります。
次のような刺身盛合せのパターンがあると考えます。
これは上記の刺身の種類をシーンに合わせて変化させるということです。
平日型の旬鮮盛りのようなリーズナブルな盛合せの中心になります。
それに対して週末型はファミリーパックが中心になると思います。
また晴れの日は型式にこだわった盛合せになりますし、グルメ型はトロ尽くしのように通常の盛合せよりおいしさを強調した刺身盛合せになります。
シーンに合わせて使い分けることができます。
刺身の計数
刺身カテゴリについて必要な数値を確認しましょう。
重要なものは次の通りです。
- 刺身カテゴリの構成比
- 刺身のロス率
まずはこの数値を把握して変化させていきましょう。
刺身カテゴリの構成比
攻める鮮魚売場で考えると刺身の構成比は最低25%は必要と考えます。
もちろん、地域や水揚げ地であるかなどの環境によって異なりますが、生鮮強化型にしたいときは刺身の売上も大きくしていく必要があります。
刺身のロス率
これも企業によって異なりますが最低でも10%以下にはしたいところです。
製造を前提としますので若干高めになるのはやむを得ないですが廃棄金額が多くなるようならそれは計画自体に問題があるとみないといけません。
本来刺身は計画的に把握するべきです。
もちろん売れたら作る形が一番ロスは少なくなります。
しかしながら概してそのやり方だとチャンスロスになるものです。
すなわちその都度作っていたのでは来店の波に間に合わないか遅れてしまうことになります。
なのでその日の製造量をあらかじめ算出して結果を検証しながら日単位で調整していくことが必要になります。
刺身の作り方
刺身の作り方はいろんな流派があったり、東西で作り方が違ったりします。
ここでは基本的なところだけご案内します。
詳細記事>刺身の切り方【無料完全解説】スーパー・飲食店刺身担当者向け
平作りと薄作り
魚の種類によって切身の厚みを変えます。
その時に厚めに切るのが平作りです。
それに対して薄めに切るのが薄作りです。
平切りと削ぎ切り
今ほどの平作りと薄作りに対応した形で包丁の切り方も変わります。
平作りをするときはサクの右側から切る平切りで切ります。
薄作りはサクの左側から削ぐように切ります。
詳しくは↓こちらの記事で。
刺身の知識 〜担当者向け基礎テスト
担当者の知識の確認も必要です。
ミニテストのようなものもで知識の確認をしましょう。
短時間で簡単にできるツールとして刺身基礎テストをご用意しました。
ちょっと空いた時間でやってみてください。
刺身関連事項
さかなのさで作成した刺身関連事項をここで紹介します。
リンクをクリックしてさかなのさ記事へお進みください。
- 刺身の左にマグロを置く
- 刺身の消費期限
- 刺身盛合せを上手に作るコツ
まとめ
刺身は鮮魚部門にとっては花形です。
また同時にお客様へのアピールポイントでもあります。
その重要性を認識して計画製造を模索していくことになります。
さかなのさでも刺身のプロ養成講座を開設して刺身の指導を行っていく予定にしています。
なにかご希望ありましたら今の間なら承らせていただきます。
コメント欄または問合せコーナーからお声をおかけください。
<終わり>
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